看寿賞の一般推薦は次のとおりとした。
結果は周知のとおりで武島作と今村作は受賞不成。
詰将棋全国大会の翌日、
とツイートしたところ、
ということで書きます。
(今思い出すと小林さんが武島作の話をし始めたところで小泉さんが来て中編賞の話になってしまったような気がする)
まず件の武島作
パラ2017.6武島広秋

92馬、83飛、同馬、74飛、同馬以下15手詰
小林さんの言いたかったことは
「見た目の手順は馬屋原剛35手に似ていますが、むしろオーロラ手筋の応用として評価するべきで、その場合、同様の構図の作品が金子清志11手にある」ということ。(「 」内はメールから引用です)
本作はオーロラ手筋だということは久保イキロンさんも言っていた。
鍵アカなので直接引用できないが
「順位戦の武島さんの作品は、馬屋原手筋じゃなくてオーロラちゃう?」
「オーロラちゃう?っていうか、オーロラやで」
と看寿賞選考経過を読んで呟いている。
馬屋原作はこちら
パラ2015.11馬屋原剛(半期賞)

93角、84飛、同角成、75飛、同馬以下35手詰
手順と解説は
「書きかけのブログ」で。
なぜ飛車の連続合をするのかというと、飛車の後方の利きにより81馬(武島作)あるいは82角成(馬屋原作)とさせないため。
なので同じように見えるが81馬と82角成では目的が異なる。
武島作、2手目45玉と逃げると81馬、63香合、36角(次図)、35玉、63角成、37と、46馬で初形の69角と93馬が46~81のラインで連結して詰んでしまう。

私は単純なのでオーロラ手筋と聞くと斜めの筋に連続合をするものだと思っていたが、どうやらそれに加えて角の連結防止がセットらしい。
一方、馬屋原作は2手目46玉と逃げると82角成、36玉、72馬(次図)と72角を取って詰んでしまう。馬が8筋にいても73馬~72馬と72角を取る手がある。そこで72角を質駒にしないために飛車の連続合が必要となってくる。これは馬屋原さんのオリジナル。馬屋原原理とか馬屋原手筋とか呼ばれているようだ。

さて、金子作
パラ2006.5金子清志

88馬、同龍、42龍以下11手詰
初手77馬でなく何故88馬なのか。
試しに初手77馬とし2手目24玉と逃げてみると68馬と引かれ、35歩、13角(次図)、15玉、35角成、12香、24馬で角と馬が13~68のラインで連結して詰んでしまう。

そこで馬を引く手を阻止するため66香、同馬、55香、同馬、44香の三連合が唯一の逃れ手順となる。
しかし、玉方の持駒は香3枚。88馬とすると33玉との距離は斜め4マスなので香車が1枚足らないため88同龍とせざるを得ないという仕掛け。
小林さんは「同様の構図」というが、どこが同様なのか。
武島作の途中図と金子作の途中図を比べてみると上下反転だが玉を馬と角でサンドイッチした形になっている。
本家の「オーロラ」はどうなっているか。
次図は24手目44香としたときの変化図だがサンドイッチにはなっていない。

もう一つ、四香連合回避の添川公司作の変化図
これはオーロラのパターンだ。(オーロラと添川作は最後にまとめて紹介します)

さすがは小林さん、慧眼には恐れ入る。
が、事ここに至ってようやく思い出したことがあった。
パラ2013.5武島宏明(改良図)

77馬、66香、同馬、55香、同馬、44飛以下41手詰
手順と解説は
「詰パラ大学解答のブログ」を見てほしいが、原理は金子清志氏作の借り物と作者はコメントしている。
何となく、つながったような気がする。
小林さんは「金子作があったとしても、連続飛車合にしてあの手順でまとめ上げたの は神業で、2017年の武島作では一番好きな作品」と述べている。
看寿賞作についても小林さんのコメントがある。
パラ2017.5武島広秋(看寿賞、半期賞)

57銀以下17手詰
「飛合(普通合)からの収束は新ヶ江作に前例がありますが、飛合を捨合で出したところが素晴らしく、受賞作として申し分のない作品です」
新ヶ江作はこちら
パラ1982.8新ヶ江幸弘

47金以下19手詰
最後にオーロラと添川作を載せておきます。
近代将棋1973.5詰吉(=上田吉一)「オーロラ」(極光21#65、塚田賞)
近代将棋1980.3添川公司(看寿賞、塚田賞)

手順と解説は詰将棋の欠片にリンクしましたが、首猛夫の
「真夜中の独り言」もお薦め。亡くなって10年になるが今もブログが読めるとは有り難いことです。
次回は気が向いたら斜め連合の作をいくつか紹介したいと思います。