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桂の二段跳び消去による打歩詰回避・打開

説明調のタイトルだがピッタリの言葉が浮かばないのでお許しを。

関西将棋会館HP「今月の詰将棋」の5月出題作(内藤國雄九段)はちょっぴり感心した。
20140529内藤0手
のちに14歩と打つ手が打歩詰にならないよう36桂を消去して24へ脱出できるようにするという仕掛け。
類似例はありそうに思え検索してみたが、私のデータベースにはなかった。

上の作は脱出路を塞いでいる桂を消去するというパターン。
そもそも、このパターンの作が少ない。

代表例はパラ1981年5月号小林譲(四百人一局集収録、17手詰)
0422kobayashi0手

ほかに京都民報2006年11月12日楠原崇司(15手詰)
Moon Shine386★0手

そしてパラ2007年5月号高橋和男(25手詰)
1688takahashi0手
この3作しか見つからなかった。

一般的なのは、桂の利きがある地点に歩を打つことになるので予め桂を消去するパターンだろう。
パラ1967年2月号松井秀雄(15手詰)
1049matsui0手
初手に打った27桂が残っていると後の15歩が打歩詰になるので、桂を消去し15歩が取れるようにする。
湯村光造さんの「歩詰手筋総まくり」には、桂の二段跳びで詰方の囲い駒を減らす作は本作が最初、
その後応用作はかなりあると書かれている。
実際10作程見つかった。
初出と作者名を載せておく。

近代将棋1969年8月号北川邦男(渓流珠玉編83番)
将棋ジャーナル1978年4月号稲村守雄
近代将棋1978年7月号植田尚宏
将棋マガジン1989年8月号編集部
近代将棋1990年10月号原島利郎
将棋世界1991年3月号付録上田吉一珠玉短編39題14番
将棋世界1991年10月号上田吉一(極光21・2番)
近代将棋1994年4月号平松準一
近代将棋1994年7月号岡田敏
京都民報2004年10月31日楠原崇司

さて、松井作よりも前に発表されている次の作はどうか。
パラ1965年7月号柏川悦夫(「詰」89番、 21手詰)
3686kashikawa0手

桂を消去しないと次の局面に陥る。
3686kashikawa6手
15歩は打歩詰だが、その元凶は25飛ではなく37桂なのである。
広義では脱出路を塞いでいる桂を消去するというパターンなのだろうが、
何となく相馬さんのグループ不利合駒を連想をしてしまった。
25飛を取っても逃げても同手数なので「盤上流転」には収められなかったのかもしれないが、
忘れてはいけない作だろう。 続きを読む

詰将棋パラダイス2014年5月号(その2)

類作には当たらないと思うが、作者から申し出があったので載せます。

◆小学校、柳原裕司
さりげなくアクロバティックな手順を見せる。まさに完成品。
201405小220手

焦点の香合から角(馬)筋を通す龍捨てはパラ1993年9月号森長宏明(不完全作)にある。
2091morinaga0手
35香~27桂までの15手詰だが、初手34香、5手目22金、7手目33香成の余詰がある。

類似指摘者は小林敏樹さん。彼の頭の中にはあらゆる筋が整理されて詰まっているようだ。
森長作は順位戦の作だが、当時の解説者は柳原さん!
全く覚えていなかったとぼやいている。まあ、それが普通でしょう。

将棋世界2014年6月号

今回取り上げる作は類作という訳ではないのだが、あれこれ理由を付けて過去作を紹介するのもこのブログの目的の一つなので、お許しあれ。

◆詰将棋サロン、安武翔太
201406将世40手

恥ずかしながら私は知らなかったのだが、この作に見られる、間に味方の駒を挟んだ飛香のコンビネーションを若島手筋というらしい。
オリジナルはパラ1992年10月号若島正(盤上のファンタジア33番、15手詰)
盤上のファンタジアを確認するとちゃんと若島手筋と言う言葉があった。

この作は二枚飛車のコンビネーションだが二枚角で実現した作が
パラ1994年10月号宗岡博之「MOTOR DRIVE」(看寿賞&半期賞、17手詰)

飛香のコンビネーションでは次の作が一番古そうだ。
パラ1993年7月号村木徳(孫六集189番、13手詰)
1945muraki0手
パラへの投稿は1992年10月らしいので(わざわざ調べてくださった斎藤さん、ありがとうございます)、
若島作を参考にした可能性は低いだろう。
なお、このパターンの作としては他に
パラ1996年4月号山本裕道(余詰、17手詰)
近代将棋2007年7月号岩田智之(9手詰)がある。


続いて昨日の将棋フォーカスでチラッと映った2作。
◆詰将棋サロン、廣瀬崇幹
月間優秀作。収束から類型的と感じてしまうが、24馬を置いたのが工夫で角の翻弄は流石。
201406将世70手

馬以外を置いた作であれば例えばこんな作。
将棋ジャ-ナル1984年4月号御回三八(11手詰)
0532gokai0手


◆詰将棋サロン、山川悟
意外にも初入選。序の工夫は見て取れる。
201406将世80手

同じ収束を3作紹介。
パラ1973年11月号吉村達也(25手詰)
3073yoshimura0手
角不成のリピート。

パラ2011年3月号椎谷彰(15手詰)
201103ヤンデ40手
双玉飛角図式。
著名な作者だが三百人一局集にも四百人一局集にも名前はなかった。

パラ2012年4月号宮原航「ロンド」(27手詰)
201204短190手
馬の上下運動で龍と角を誘導する。これが中学生の作とは。

詰将棋パラダイス2014年5月号

◆中学校、青木裕一
結構うまいまとめ方かも。(と解いた時は思った)
201405中230手

偶然にも同じ月の「my cube」に次の作が。
「my cube」2014年5月9日鈴川優希
20140509鈴川0手
金田秀信を見るようなエッセンスの抽出。
ツイートからすると作者が中学校を解いたのは本作をアップした翌日のようだ。

但しこの組立てには前例がある。
京都民報1999年5月30日楠原崇司(=山田康平)
Moon Shine220手
コーヘー天国の乱!」で見ることができる。


◆高等学校、服部彰夫
(失礼は承知の上で)意外とまともな作だった。
201405高220手

もしかすると酒井克彦のオマージュなのかもしれない。
近代将棋1988年4月号駒三十九(=酒井克彦、からくり箱76番、11手詰)
0847koma0手